犬のパテラのグレード別ガイド|G1・G2・G3・G4の違いと、今やることの目安

絵本のような柔らかいタッチの小型犬のイラスト。パテラ(膝蓋骨脱臼)を発症した、左からパピヨン、チワワ、トイプードルの3匹が並んでいる。パピヨンは片後ろ脚を浮かせて3本足で歩き、チワワは後ろ脚を地面につけず引きずるように伏せ、トイプードルはお姉さん座り(横座り)をしている典型的な仕草を描いている。 健康・病気・怪我
パテラで片足を上げている

「パテラのグレード2って言われたけど、これって手術必要なの?」「グレード1なら大丈夫?」——病院で診断を受けた後、家に帰ってから不安がぐるぐるしてしまう飼い主さんは多いと思います。

この記事は、そんな「診断は受けたけど、じゃあ今うちの子はどういう状態で、何をすればいいの?」という疑問を整理するための記事です。

診断そのものは獣医師にしかできません。ここでの情報は「病院での説明の後に、自分なりに落ち着いて整理するための目安」として使ってください。

まず確認したいこと|パテラのグレードは「今の状態を整理する目安」であって、自己診断の確定ではありません

パテラ(膝蓋骨脱臼)のグレード分類は、獣医師が触診・X線検査などをもとに判断するものです。飼い主さんが歩き方や動きを見て「うちの子はG2だ」と確定することはできません。

また、同じグレードでも犬の体格・年齢・筋肉量・生活環境によって、実際の生活への影響はかなり違います。「G1だから絶対に大丈夫」「G3だから必ず手術」という一律の話にはなりません。

グレード分類を知ることの目的は、今の状態を言葉にして、病院の先生と話をしやすくすること。それが第一歩です。

なお、パテラは小型犬に多い疾患です。チワワ・トイプードル・ポメラニアン・マルチーズ・パピヨン・ヨークシャーテリアといった犬種では、成長過程で膝蓋骨が正常な溝にはまりにくい構造を持っていることが多く、健康診断で発見されるケースも少なくありません。「うちの子がなんで?」と驚く必要はない疾患ですが、だからといって軽く見てはいけない疾患でもあります。

パテラのグレード1〜4をざっくり整理するとこうなります

まず大枠だけ把握しておきましょう。細かい話はこの後、グレード別に解説します。

グレード 膝蓋骨の状態 日常生活への影響 一般的な方針(目安)
G1 外れているが押すと戻る/普段は正常位置 ほぼなし〜ごくまれに 経過観察・生活管理が中心
G2 自然に外れることがある/自然に戻ることも スキップ・ときどき足を上げる 保存療法を試しつつ経過観察
G3 常時外れている/手で押しても戻りにくい 足を引きずる・歩き方が変わる 外科手術を検討するケースが多い
G4 常時脱臼・骨の変形あり 後ろ足が使えない・うずくまる 外科手術の適用を急いで検討

「目安」と書いているのは理由があります。グレードだけで治療方針が決まるわけではなく、年齢・症状の進行速度・筋力・生活環境など複数の要素を加味して獣医師が判断します。グレード3でも保存療法が選択されることはありますし、グレード2でも年齢・進行速度によっては手術が勧められることがあります。あくまで「傾向」として参考にしてください。

G1の子で見ておきたいこと

よくある状態

グレード1では、膝蓋骨は通常の位置に収まっています。手で押すと外れますが、放すと自然に戻ります。日常生活で症状が出ないことがほとんどで、「検査してはじめてわかった」「健康診断で偶然見つかった」というケースも多いです。痛みを表すそぶりも、この段階ではほとんど見られません。

飼い主が迷いやすいこと

「症状がないのに、何かしなきゃいけないの?」という迷いが多いのがG1です。答えとしては、「今すぐ何かを劇的に変える必要はないが、状態を把握し続けることは大切」。経過観察を軽く見ず、定期的に受診することが基本になります。

暮らしで意識したいこと

  • フローリングなど滑りやすい床へのマットやカーペット設置
  • ソファや段差からの飛び降りを減らす(足腰への衝撃軽減)
  • 太らせない(膝への負担を増やさない)
  • 筋力が落ちすぎない程度の無理のない散歩を継続

受診時に確認したいこと

  • 次の受診の目安(何ヶ月後か)
  • 悪化しているかどうかのサインを教えてもらう
  • 体重管理の具体的な目標体重

早めに相談したい変化

スキップや足を上げる回数が増えてきた、足を着きたがらない時間が長くなった、などが見られたら受診のタイミングです。G1のままでもこれらの変化は起きることがあります。「変化がある=グレードが上がった」とは限りませんが、変化自体を見逃さないことが大切です。

G2の子で悩みやすいこと

よくある状態

グレード2は、膝蓋骨が自然に外れることがあり、そのまま外れた状態で歩くこともあります。ただし自然に戻ることも多く、足を2〜3歩上げた後にトントンと地面を叩くと元に戻る「スキップ歩行」が見られるのが特徴です。頻度には個体差があり、週に数回気になる程度の子もいれば、ほとんど目立たない子もいます。

飼い主が迷いやすいこと

G2は「手術するかしないか」で一番悩むグレードです。「症状が出てないから様子見でいい?」「でも進行したら遅すぎる?」という揺らぎが生まれやすい段階でもあります。

一般的には、症状が軽度で生活への支障が少なければ保存療法(生活管理・体重管理・リハビリ)を試みながら経過を見ることが多いですが、症状の頻度・進行スピード・年齢によって判断が変わります。「いつ手術すれば?」は獣医師と都度確認していくことが現実的です。

暮らしで意識したいこと

  • 滑り止め対策(フローリング、階段など)
  • 段差の昇降を補助する(スロープ、抱っこ)
  • 適度な筋力維持のための散歩(長すぎず、激しすぎない)
  • 肥満の防止(体重増加が膝への負担を増やす)
  • 関節サポートのサプリメント(グルコサミン・コンドロイチン等)の検討

受診時に確認したいこと

  • 現時点での手術の必要性はどう判断されているか
  • 手術を検討するとしたらどのタイミングか(判断基準を聞く)
  • 次回の受診までに記録しておくとよい症状(スキップの頻度など)
  • リハビリや筋力強化の方法

早めに相談したい変化

スキップの頻度が明らかに増えた、外れたまま戻らない時間が長くなった、足を全く使わない時間が増えた、痛がるそぶりが見られるようになった、などは早めに受診してください。

G3で意識したいこと

よくある状態

グレード3では、膝蓋骨が常に外れた状態になっています。手で押しても元の位置に戻らないか、戻ってもすぐに外れます。後ろ足を引きずるような歩き方をすることが増え、股関節や骨格にも影響が出始めることがあります。痛みが出る場合もあり、触られることを嫌がる・鳴くなどのサインが出ることもあります。

飼い主が迷いやすいこと

「手術を勧められたけど、全身麻酔が不安」「費用が心配」という声が多いのがG3です。G3になると保存療法だけでの改善は難しくなることが多く、外科手術が推奨されるケースが増えますが、年齢・全身状態・骨格の変形具合によって個別判断になります。

「手術しないとどうなるか」を獣医師に正直に聞くことも大切です。放置によって骨格変形が進んだり、将来的に手術が困難になるリスクがあることも知っておきたいポイントです。

暮らしで意識したいこと

  • 長時間の運動・激しい動きは控える
  • 床の滑り止めを徹底する(転倒が骨格変形を悪化させる可能性)
  • 体重を増やさない(すでに膝が支えられていない状態なので負担を最小化)
  • 痛みのサイン(鳴く・触れると嫌がる・食欲低下など)を見逃さない

受診時に確認したいこと

  • 手術のリスクと期待できる回復について
  • 手術しない場合のリスクと今後の見通し
  • 手術前に整えておくこと(体重・筋力など)
  • 術後の生活(散歩再開のタイミング・ごはん等)

早めに相談したい変化

後ろ足を全く地面につけない時間が増えた、明らかに痛がっている、食欲が落ちた、動きたがらないなどは早急に受診が必要です。

G4で早めに相談したいこと

よくある状態

グレード4は、膝蓋骨が常に脱臼し、手で押しても戻りません。脛骨の回旋・変形が生じていることが多く、後ろ足を床につけられない・うずくまるような姿勢で歩くといった状態が見られます。犬にとってもかなり負担のある状態で、痛みも伴っていることが多いです。

飼い主が迷いやすいこと

G4では「今から手術できるのか」「手遅れにはなっていないか」という不安が大きくなります。骨格の変形が進んでいる場合、手術の難易度が上がったり、術後の回復に時間がかかる場合があります。ただし、獣医師の判断なく「もうダメだ」と決めつけることはしないでください。G4でも手術で改善するケースはあります。整形外科専門の動物病院への紹介を依頼することも一つの選択肢です。

暮らしで意識したいこと

  • できる限り急いで専門医・整形外科を得意とする動物病院への受診
  • その間の生活では衝撃を避ける(段差禁止・抱っこ移動など)
  • 犬がひとりで動ける範囲を安全にする(転倒しない環境整備)

受診時に確認したいこと

  • 手術の適用可否・タイミング
  • 整形外科専門の動物病院への紹介の可否
  • 手術できない場合の疼痛管理・生活サポートの方法

早めに相談したい変化

後ろ足を全く使えていない、鳴き続ける、起き上がれないなどの状態は緊急性が高い可能性があります。すぐに受診してください。

「自然に治る?」と聞かれた時に、先に整理したいこと

パテラは構造的な問題(膝蓋骨が正常な位置に収まりにくい状態)なので、骨の形や関節の構造が「自然に元通りになる」ということはほとんどありません。

ただし、「症状が目立たなくなる」ことはあります。G1〜G2の子が、体重管理・床環境の改善・適度な筋力維持によって脱臼の頻度を下げ、生活への支障がほとんどない状態を長く保つケースは多いです。

「自然に治った」と言われることの多くは、正確には「症状が出にくい状態になった」という意味合いが強いです。完治を前提にするより、「状態を悪化させないための管理を続ける」という視点で考えると、やることが明確になります。

手術せずに経過観察を選ぶ場合でも、「経過を見続ける(定期受診)」「悪化サインに気づく(観察)」「生活環境を整える(管理)」の3つは継続して必要です。これらは手術後の子にも共通して大切なことです。

グレード別「今やること」早見表

グレード 今すぐやること 継続してやること 受診の目安
G1 ・床の滑り止め設置
・体重確認
・定期受診(3〜6ヶ月ごと目安)
・体重管理・散歩継続
・スキップが増えたら
・足を上げる回数が増えたら
G2 ・滑り止め対策
・段差の制限
・体重管理開始
・症状の頻度を記録
・定期受診
・サプリ検討
・スキップ増加
・外れたまま戻らない時間が増えたら
G3 ・運動制限(激しい運動禁止)
・手術の検討を獣医師と話す
・痛みのサインを毎日確認
・環境整備
・痛がる素振り
・食欲低下
・全く足を使わない
G4 ・早急に受診・専門病院への相談 ・疼痛管理
・安全な環境整備
・起き上がれない
・鳴き続けるなど緊急サインは即日受診

迷ったら、まずはこの3つから見直したい

「何からやればいいかわからない」という方は、グレードに関係なくまずこの3つを確認してください。

1. 床の滑り止めをしているか

フローリングは犬の膝に非常に負担をかけます。パテラに限らず、後ろ足の関節が弱い犬にとって「滑る床で生活する」こと自体がリスクです。コルクマット・カーペット・ラグなど、着地する場所に滑り止めを設置することは、費用対効果が高い対策のひとつです。ソファから降りる場所・玄関・廊下など、よく通る場所から優先して整えてみてください。

2. 体重が適正かどうか確認しているか

体重が増えると膝への荷重が増えること自体は明確です。かかりつけの獣医師に目標体重を確認し、食事量の見直しと間食のコントロールをしてみてください。「標準体重の範囲内」を維持することが、膝への負担を減らす一番シンプルな方法です。ダイエットが必要な場合は、急激に減らすのではなく、週単位でゆっくり調整していくことが基本です。

3. 受診の記録・症状のメモをしているか

「なんか最近多い気がする」ではなく、「今週は3回スキップした」という情報を持っていくことで、獣医師との会話の精度が上がります。スマホのメモで十分です。日付・どんな状況で起きたか・様子を残しておくと、次の受診でとても役立ちます。「何もなかった週」を記録しておくことも、変化の傾向をつかむうえで有効です。

まとめ

パテラのグレード分類は、今の状態を言語化して整理するための「ものさし」です。グレードの数字だけで治療方針や予後が決まるわけではなく、獣医師と一緒に個別に判断していくことが前提です。

この記事で伝えたかったのは以下の3点です。

  • グレードごとに「今見ておくこと」「変化の見方」「受診時に聞くこと」を把握しておくと、不安が少し整理できる
  • 「自然に治る」ではなく「悪化させないための管理を続ける」という視点がベース
  • グレードに関係なく、床の滑り止め・体重管理・症状の記録はすぐ始められる

診断を受けた直後は不安でいっぱいだと思いますが、まずは今日からできる小さなことを一つずつ始めてみてください。わからないことが出てきたら、遠慮せず担当の獣医師に聞いてみてください。それが一番確かな方法です。


※この記事は診断・治療の代替を目的とするものではありません。愛犬の症状や治療方針については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

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